青春は金魚鉢 僕たちの生きていた場所 水の中に差し込んだ 黄色く滲んだ微かな光に 幸せを感じていた 君が膨らませた頬に指を押し当てた 僕を見つめた君の瞳が微笑む 滑ってばかりの冗談で僕を笑わせる 君が急に僕の手を取り走り出す いつまでも自由に いつまでも気儘で そんな淡い夢のような世界を 時間は決して見逃してくれない いつしか覚めなければならない 「人生」という言葉では計れない 青春は金魚鉢 いつしか孤独で いつしか喪失な 僕たちが再び出会うことはもう無いだろうと あの日の桜に失くした「ときめき」も「期待」も 偽りのない「諦め」に従順だった少なくともあの時 そう思い込もうとしていた 今 君は涙になる 君に会いたい あの時の 胸の中に刺さったままの気持ちを 君に伝えたい 想いが痛くて苦しくて 君が愛しくて 青春は金魚鉢 僕たちが笑っていた場所 水の中の白い砂に ちから強く根を張る水草に 安らぎを感じていた 夏の晴れた空の下校庭の手洗い場で 汗を流す僕目掛けホースのシャワー浴びせた いたずらな君の笑い声が空に響いた 僕はありのままの君に恋をしていた いつまでも気楽で いつまでも奔放に そんな淡い夢のような世界を 時間は決して許してくれない いつしか決断を必要に迫られ 「現実」という言葉では語れない 青春は金魚鉢 いつしか強制な いつしか束縛も 傷つくことが怖くて君を無視してしまった 幼くぎこちない僕はあんな別れしか出来なくて 偽りのない「諦め」に従順だった少なくともあの時 そう思い込もうとしていた 今 過ぎ去った過去が 僕に押し寄せ あの時の 君の横顔が忘れられない もう一度僕に 笑顔を見せてくれないかい 君に会いたい 君に会いたい
ー紫紅草ー